企業研修における環境教育について
皆さんは駆除のために捕獲されたアライグマ(北米原産。見た目がかわいいという理由でペットにするために持ち込まれたが、人になつかずに捨てられた個体が野外繁殖し、現在では、様々な在来種を捕食することで生態系を破壊し、農作物を食い荒らす迷惑な動物として駆除されている)がどんな殺され方をしているかご存じでしょうか?捕獲用のハコわな(長さ80cmくらいの鉄の檻)ごと、二酸化炭素ボンベとつながったボックスの中に入れられ、約10分間、二酸化炭素で充満したボックスの中で苦しみながら窒息死させられています。仕事だったとはいえ、とても悲しい現実でした。自分と同じ哺乳類を、同じように体温があり、体を切れば赤い血が流れる動物を、自分で捕まえ自分で殺す。何度経験しても、気持ちが慣れることはありませんでした。こんなことが北海道だけで年間に約1万回も繰り返されているのです。
「見た目はかわいいけど、どんな性質の動物なのか」、「本当に人間が飼育できる動物なのか」。私たちがもっと深く考え、北米からアライグマを安易に連れて来なければ、こんな悲しい殺され方をする必要はなかったのに。
こういった外来生物問題以外にも、私たち人間が生きていくために野生生物の命を奪っている事例はたくさんあります。生活に欠かすことのできない車が、多くの野生動物を引き殺しています。これを「ロードキル」といいます。キツネやタヌキ、リスなどの哺乳類から、ヘビやトカゲ、カエルなどの爬虫類や両生類も、窓にぶつかった昆虫の命を奪うこともロードキルです。バードストライク。私たちが生きるために必要な家や学校、病院の窓などに鳥類がぶつかって命を落としています。電気をつくり出すための風車のプロペラが、たくさんの鳥類を切り裂きます。道路や線路などをつくるため、山を削り、木を切り出し、多くの生物の住処を破壊しています。野生動物に安易に餌付けすることで、その動物の体を弱らせ、食う食われるという“自然界のつながり”を破壊し、特定の場所に不必要に野生動物を集めることで、例えば鳥インフルエンザなどの感染症を拡げています。数え上げればきりがありません。
たくさんお金を稼いで、立派な家に住んで、かっこいい車に乗って、おしゃれな服を着て、おいしいものを食べて、豊かに楽しく暮らしたい。おそらく地球に生きる人間の大半は、そんなことばかり考えて暮らしているのだと思いますが…。本当にそれだけでいいのでしょうか。人間が生み出してきた文明や発展を否定するつもりもないし、豊かになろうとすることが悪いと言っているわけではありません。でも私たち人間は、たくさんの生物たちが数十億年という永い永い時間をかけ、絶滅や進化を続けるなかで育まれてきた“つながり”や“バランス”のおかげで生きていられることを、もっと深く、もっと真剣に考え、もっと謙虚に生きる必要があると思います。
正直に言わせていただきますと、企業研修における環境教育の一般的な目的と思われる「環境問題と向き合っているというアピールによる企業のイメージアップ」や「環境に配慮した新事業を生み出すことで増収を図る」などということは、私にはまったく関心がありません。根本的に、人間なんかがこれ以上発展しないほうが、地球のためになると思っているからです。人間がどれほどバカで身勝手な動物なのか。地球から消えてもいい動物を1種だけ選ぶなら、それは誰か。人間がこの地球で生き続けたいのなら、「人間の在り方」を考え直す必要があるのではないか。私たちの各学習プログラムを通し、こういった考え方ができる人が一人でも増えてほしい、という気持ちで環境教育を実施しています。
最大の罪は無関心であること。「ぼく、わたし、カンケーないし」と思うかたはそれまでのこと。少なくても私は、可能な範囲で自然環境や野生生物に配慮しながら生きていける人間になりたい。当法人の学習プログラムが、「人間の在り方」について、皆さんに再考していただくきっかけとなることを願って。
プログラム一覧
※料金はお問い合わせください
講義・講演
生きものどうしの「つながり」(生物多様性)や環境問題、環境教育の必要性についてお話しします。現在の日本は、外来生物問題やロードキル(野生動物の交通事故)、野生動物へのエサやり問題など、人間の活動が引き起こす環境問題で溢れています。環境破壊を食い止め、自然環境を保全していくためには、子どもたちが身近な自然にどっぷり浸かり、野生動物との関わりを通してつながりの大切さや人間の暮らし方について深く考えるきっかけを与えることが私たち大人の役目であると考えています。
- 学習形態:講義
- 時間:1〜3時間
- 時期:通年
- 場所:どこでも可
川の生きもの学習
100%自然の川にもぐり、水生昆虫や魚類を観察し、環境と環境のつながりや生きものどうしのつながり、川のはたらきについて学びます。
- 学習形態:体験
- 時間:2〜4時間
- 時期:6月〜9月
- 場所:洞爺湖周辺
シカとオオカミ学習
現在北海道では、エゾシカが増えすぎたことにより様々な問題が起こっています。なぜエゾシカはここまで増えてしまったのでしょうか?「北海道の縮図」とも呼ばれる洞爺湖中島へ渡り、北海道の生態系について学びます。
- 学習形態:講義+体験(講義のみも可)
- 時期:通年
- 時間:1〜4時間
- 場所:洞爺湖中島(講義のみの場合はどこでも可)
ホタル学習
北海道には在来のホタルが4種いますが、そのうち発光するのはヘイケボタル1種のみで、有名なゲンジボタルは観光用に本州から持ち込まれたものです。100%野生のヘイケボタルを観察し、ホタルの生態や、本当の意味での「豊かな自然」について考えていきます。
- 学習形態:体験
- 場所:豊浦町
- 時期:7月〜8月(夜のみ)
- 料金:3,000円(1名)
- 時間:1時間
ゆき学習
スノーシュー(現代版かんじき)を履いて雪の中を歩き、冬の生きものの暮らしや、雪山でのアウトドアスキル、そして「雪」そのものの性質や役割について学びます。
※ソフトな「冬の森歩き」から本格的な冬山登山まで対応可能です。
- 学習形態:体験
- 時間:2時間〜
- 時期:1月〜3月
- 場所:要相談
冬キャンプ
雪の上にテントを張り、一晩を過ごします。マイナス十数度まで冷え込みますが、しっかりとした装備と確かな知識があれば、とても快適に過ごすことができます。夏には味わえないワクワクと、無事朝を迎えた時の達成感はひとしおです。
- 学習形態:体験
- 時間:1泊2日
- 時期:12月〜3月
- 場所:要相談
森の生きもの学習
近くの森を歩き、森のはたらきや、人間との関わりについて学びます。「緑を大切に」と気軽に言いますが、どうして大切にしなければいけないのでしょうか?人間の手では到底作り出すことのできない、自然界の深い「つながり」について学びます。
- 学習形態:体験
- 時間:1〜3時間
- 場所:洞爺湖周辺
- 時期:5月〜9月
ヘビ・トカゲ学習
敬遠されがちな爬虫類を手に取り、生きものと自然環境のつながりを学びます。こういった生物のおかげで私たちも生きていくことができるのです。野生のトカゲ…見たことありますか?
- 学習形態:体験
- 時間:2〜4時間
- 場所:洞爺湖周辺
- 時期:6月〜9月
ニホンザリガニ学習
二ホンザリガニは、地球上で北海道と東北の一部にのみ生息する貴重な固有種です。しかし、人間の開発行為など様々な理由により、絶滅の危機に瀕しています。二ホンザリガニの生態や、環境破壊、わたしたちの暮らし方について考えていきます。
- 学習形態:体験
- 時間:1〜2時間
- 場所:洞爺湖周辺
- 時期:5月〜10月
カブトムシ・クワガタ学習
カブトムシとクワガタ。もともと北海道に棲んでいたのはどっち?外来生物とは、「外国から来た生きもの」だけではありません。人間の活動による生きものの移動と、その影響について学びます。
- 学習形態:体験
- 時間:1〜2時間
- 場所:洞爺湖周辺
- 時期:7月〜8月
秋限定!サケ学習
サケの遡上を間近で観察し、その生態をとおして川のはたらきを学び、人間の暮らし方について考えます。いきものどうしのつながりを目の当たりにできる絶好の機会です。そして、命をかけて産卵をおこなう姿には圧倒されます。
※年によって、遡上の時期がずれることがあります。
- 学習形態:体験
- 時間:2時間
- 場所:洞爺湖周辺
- 時期:10月〜12月
野生deキャンプ
キャンプ場ではない100%自然の中にテントを張り、一晩を過ごします。電気ガス水道のある生活から離れ、ヘッドライトの灯りのみで過ごす夜には、現代の日常生活では決して味わうことのできない、大切な何かがあるはずです。
- 学習形態:体験
- 時間:1泊2日
- 場所:要相談
- 時期:4月〜11月
モデルプラン
日帰り生きものコース
1日で行ける限りの生きものスポットに行き、 野生動物や自然環境について学びます。
- 7:00
- 札幌発
- 9:00
- 壮瞥町着
講義・講演
- 9:30
-
川の生きもの学習
〜魚類や水生昆虫の暮らしと川のはたらきについて学ぶ〜
- 12:00
-
昼食
- 14:00
-
ヘビ・トカゲ学習
〜爬虫類の暮らしと森林のはたらきについて学ぶ〜
- 16:00
- まとめ学習
- 16:30
- 壮瞥町発
- 18:30
- 札幌着
1泊2日生きものコース
じっくり自然と向き合い、野生動物についてしっかり学ぶ24時です。
1日目
- 9:00
- 札幌発 講義・講演
- 11:30
- 壮瞥町着
ヘビ・トカゲ学習
〜爬虫類の暮らしと森林のはたらきについて学ぶ〜
・途中昼食
- 13:30
- 川の生きもの学習 〜魚類や水生昆虫の暮らしと川のはたらきについて学ぶ〜
- 17:00
-
オロフレほっとピアザ着
・テント設営
・夕食
- 19:00
- 温泉入浴
- 20:00
-
カブトムシ・クワガタ学習
〜外来生物問題について学ぶ〜
ニホンザリガニ学習 〜在来種と絶滅危惧種について学ぶ〜
- 22:30
- 就寝
2日目
- 7:00
- 朝食
- 7:30
- テント撤収・宿舎清掃
- 8:30
- 森の生きもの学習 〜噴火後の森の再生と、そこに住む生きものについて学ぶ〜
- 10:30
- 壮瞥町発 まとめ学習(車中)
- 12:30
- 札幌着
予定していたプログラムが天候等の理由により実施できなくなってしまった場合、講義のみへの変更や、体育プログラムへの切り替えが可能です。体育プログラムについてはコチラ