環境教育

コラム

2013年12月から2015年7月まで、新聞に連載されていたコラムです。

第4回

「外来生物」~よそから来た生きもの~

 前回お話した生物多様性、生きものどうしの「つながり」を人間が壊してしまっているという問題のひとつが外来生物です。授業のなかで子どもたちに「外来生物ってなあに?」と尋ねると、「あのね、外国から来た生きもの!」と返ってきます。「うーん…正解だけど百点ではないかなぁ」。そこでカブトムシの写真を見せ、「じゃあ、これは外来生物?」子どもたちに迷いが見えますが、「外来生物だよ!だって本州から来たもん」と正解を教えてくれる子もいます。
 ペットにするため、毛皮をとるため、釣りを楽しむため、薬を作るため、食料にするため…。様々な目的のために、僕たち人間は野生動植物を他の地域へと安易に連れ出し、用が済んだら捨て、野外で繁殖した彼らによって問題が起きると、捕獲してその命を絶っています。「なんのために? 誰のために? 誰がここに連れて来たんだっけ?」
 “駆除する”“殺す”“やっつける”…。生命に関わる問題はとても繊細で、授業で使用する言葉の選び方ひとつにも注意が必要です。でも子どもたちには現実を知ってもらう必要があると思っています。まずは人間がいかに身勝手な生きものなのかを知り、それから考える。今、僕たちにできることはなんだろう?
 「入れない・捨てない・ひろげない」という外来生物被害予防三原則の他、授業で必ず子どもたちに話していることがあります。それは「伝える」こと。「もしかしたら、おうちの人もカブトムシが外来生物だって知らないかも知れないよ。大人も子どもも関係ないの。知っている人が知らない人に伝える。そうすると少しずつかも知れないけど、人間の身勝手で駆除されてしまう外来生物が少なくなるんじゃないかな?」
 次に学校を訪れた時、「こないだね、家族みんなにカブトムシのことを伝えたよ!」と嬉しい報告が待っていたりします。
 すぐに成果や効果が見えるものではありません。もしかしたら、何も変わらないかも知れません。それでもコツコツのんびりと、地域の子どもたちとともに、野生動物を追いかけ続けてみようと思っています。

洞爺湖で捕獲したミシシッピアカミミガメ
(ミドリガメ)
特定外来生物のウチダザリガニは、
飼育や運搬等に規制がかかっている。

第5回

「冬・雪・北海道」

 これを書いている今もテレビでは、本州での記録的な大雪にソチオリンピック… 冬ならではのニュースが流れています。北海道も冬真っ盛り。今回は、北海道の自然を学ぶうえで欠かせない「雪」の話を少し。
 「冬の環境教育って何するんですか?」と聞かれます。冬の森を歩き、動物の足跡を追いかけたり、植物の冬芽を観察したり。でも僕が一番好きなのは「野生動物を探し、発見し、捕まえて、手で触る」ことなので、夏のようなドキドキ感はありません。でも雪国の動物たちは、冬や雪に対応するための進化をとげ、それは生きものどうしの「つながり」を考えるうえで大きな意味を持ち、また、雪そのものが生態系の中で大切な役割を果たしています。例えば、気温は氷点下なのに、何メートルも積もった雪と地面がくっついている部分の温度は約0℃。地面の中でじっと春を待つ植物たちを、雪が温めてくれています。春になると雪は水になり、山から川、海や湖へ落ち葉を運んでくれます。その落ち葉がたくさんの生きものたちの栄養となり、みんな元気に夏を過ごすことができます。
 「環境教育的」に言うとこんな感じなのでしょうが、僕自身、大好きなスキーやスノーシュー(深い雪の上を歩くための道具)を使って雪と遊ぶ時、そんな難しいことは頭にないし、たしかに子どもの頃に比べ雪の量は減ったけど、それが人間による地球温暖化のせいなのかもよくわかりません。子どもの頃、雪が降るとなぜかワクワクし、嬉しかった。理由はわからないけど。木や屋根の上からダイブしたり、冬バージョンの「基地」を作ったり、つららを食べたり。スキーでもスノーシューでも雪合戦でも何でもいいんです。とにかく雪とたわむれ「冬って楽しい!」と感じてもらうことが大切だと思っています。
 いつもスノーシューツアーに参加してくれる子が、「スノーシューを買って欲しい」とお母さんにお願いしたそうです。こんな嬉しいことはありません。  これからも、ほっぺを真っ赤にして鼻水をたらし、雪山を駆け回る「冬野生児」をたくさん育てていきたいと思います。

いつの時代も子どもは遊びの天才。野に放てば、次々と遊びの開拓を始める。

第6回

「生きものたちの冬」

 深い雪におおわれ、辺り一面真っ白になる北海道の冬は、夏に比べ、野生動物に出会う機会が少なくなりますが、それでもよく目をこらすと、雪景色の中でも様々な生きものに出会うことができます。先日、運転中に目の前をキタキツネが横切りました。虫やヘビを捕ることのできない冬は、特にネズミが貴重な獲物です。以前、雪の上に残されたキツネの足あとを、延々と追いかけてみました。すると途中で足あとが乱れ、赤い何かが雪の上に。おそらくキツネに食べられたネズミの血でしょう。これも大切な生きものどうしの「つながり」です。
キツネを見かけた同じ日。キラキラ輝く雪の上でモゾモゾ動く黒いもの。クロカワゲラという昆虫で、いつも雪の上で見かけることから「雪渓虫(セッケイムシ)」とも呼ばれています。幼虫は夏から秋を水中で暮らし、冬になると羽化して雪上に姿を現すなんとも不思議な奴ですが、幼虫は魚のエサになり、雪の上では鳥などのエサになり… これもまた、とても大切なつながりの一員です。
帰り道には道路上で何かの目が光りました。車のライトに照らされ、慌てて道路脇の雪壁を登ろうとしましたが、短足なので滑り落ちました。テンです。イタチの仲間で、胴長短足ですが、なかなか気が荒く、ネズミなどをとらえて食べています。もともと北海道にはエゾクロテンが住んでいますが、人間が毛皮をとるために本州から持ち込んだホンドテンの影響を受け、数が減っています。この時のテンはどちらだったのでしょうか。暗くてはっきりわかりませんでした。
子どもの頃、布団に入って目を閉じて、昼間に読んだ図鑑の動物たちを思い出すのが好きでした。自分が寝ている今この間にも、雪の上でも、氷の下の水中でも。たくさんの動物たちが活動し、獲物をとらえ、春夏秋冬、二十四時間、命のやり取りが続けられていることにドキドキしていました。
今、子どもたちに同じドキドキを伝えられる立場にいることに感謝しつつ、人間は全く特別なんかじゃなく、つながりの一員に過ぎないことを伝えていきたいと思っています。

暖かくて気持ちの良いある日。
キツネが大きなあくびをしていました。
水中でも陸上でも、カワゲラの仲間は
たくさんの動物のエサになっています。
つながりの役に立たない動物はいないはずだけど…
人間は大丈夫?